「実務経験 30年 以上」の「一級建築士・マンション管理士」によるマンション・団地の「疑問・お困りごと」・「大規模修繕工事の進め方」・「安心・快適な暮らしのヒント」などのアドバイスをする個人のブログです。

【より良い暮らし】マンション・団地 快適な生活(遮音)

【より良い暮らし】マンション・団地 快適な生活(遮音)

「快適に住まう」ということの本当の「意味」を考えてみましょう。

より良く、快適に住まうことのために費用を掛けて「対策」を行う事は、「贅沢」なことではありません。

むしろ、「必要」な事です。人生100年時代において、重要なのはその期間のうちで「健康に過ごせる期間」をいかに長くできるかです。

「快適」な住まいは、そのために「重要」な要素の一つです。

お住まいを「快適」にしようと、座りやすいソファや寝心地の良い寝具、最新の家電機器を購入したり、きれいなインテリアにしたり、アロマをたいたりしているでしょう。
お住まいの「快適性」とは、そういった「表面的」なものだけではありません。
「換気」「断熱」「遮音」という「根本的」な快適性の3性能をしっかり確保することが重要なのです。

本コラムでは「遮音」をとりあげます。

「遮音」の重要性

多くの方は「換気」「断熱」「遮音」について、今のお住まいの環境を「そんなもんだ」と思っているしょう。
何か問題が起こらない限りは、「何も気にしない」「何もしない」はずです。

そしてそれは、「換気」「断熱」「遮音」の優れた、「最新」のマンション・団地にお住まいの方だけではなく、実はびっくりするぐらい「換気」「断熱」「遮音」の性能が低い築古のマンション・団地にお住まい方も同様なのです。
すっかり慣れてしまっているので、「そんなもんだ」と思っているのです。

しかし、その「換気」「断熱」「遮音」が「からだの健康」「こころの健康」に直結しているとしたら、無関心のままでいられるでしょうか。

「健康寿命」に関わることなのです。

「換気」と「断熱」については、「建築基準法」の基準がありますが、「遮音」についての法的な基準がありません。
マンション・団地の場合に「住宅性能評価」というものがあり、遮音については「音環境に関すること」として、「評価」の項目になっています。

但し、「選択項目」つまりオプションになっていて、「必須」ではありません。
それだけ、「基準」や「評価」が難しいのです。

騒音のストレス

「騒音」は、ストレスになります。
「騒音」の意味を調べると、

騒がしく、不快感を起こさせる音。また、ある目的に対して障害になる音。」
となっています。

「音」については、感じ方の「個人差」が大きいこともあって、「ここからアウト」といった、指標としての「定量化」が、しにくいのです。
また、「対策」についても、音の「周波数」や壁、窓、床などの「種類」や「設置状況」などによって、異なってきます。 「気温」によってすら、「遮音性能」が変わってくる素材もあるのです。

「遮音」について、研究はかなり進んでいるのですが、やや複雑で「分かりにくい」のが、難点です。

「外からの音」については、お住まいの方が個々の基準で「ストレス」に感じないレベルを想定した上で、そのための「対策」を導入することが望ましいでしょう。

つまり、個人差に合わせるのです。

また、「音」を出してしまう側としての不安や気遣いすることの「ストレス」もあります。
特にマンション・団地の場合には、「階下」や「隣戸」への音でしょう。
こちらは、発生させてしまう「音」の大きさを想定して、外部に対してどこまで「下げる」かを想定する必要があります。

騒音の種類

以下は、騒音の目安です。

これは、騒音の大きさを「体感」と「音圧レベル」(デジベル・db)で表しています。
ここでいう、「静かな事務所(50db)」未満にまで「音圧レベル」を下げることが「対策」の一つの目安になるでしょう。

「音」には、「空気伝搬音」と「固体伝搬音」があります。
普通の音と「物を通して」振動が伝わることによる音です。
この「物を通して」というのが、マンション・団地でよく問題になる「上階からの足音などの音」になります。

「騒音」は、以下のように「分類」出来ます。

  1. 「外からの不快な音」と「自分が発生原の不快な音」
  2. 「音として発生したもの」と「振動が音になったもの」

騒音による被害

「健康被害」と「活動被害」が考えられます。
次のようなことです。

  • 健康被害
    • 睡眠不足
    • 頭痛
    • ノイローゼ など
  • 活動被害
    • 会話の妨害
    • TVなどの視聴妨害
    • 読者、勉強などの妨害 など

騒音が「継続的」かつ「顕著」であれば、上記のような問題が発生するでしょう。
また、自分が「騒音の発生源」になる場合もあることを忘れてはいけません。

音のやっかいなところは、「小さい音」でも気になってしまう場合があることです。
その最たるものが「上階の足音」です。

大きな音ではなくとも、しょっちゅう足音が聞こえると「不快」ですね。

以前、ある新築マンションに入居された方から、クレームがありました。
「足音が聞こえる」「分譲マンションとして大問題である」といった内容でした。

実際に現地に行って聞いてきました。
朝の7時頃です。
シーンとした室内。
息をひそめて待っていると、上階から「微かな足音」がしました。

「ほらっ!足音がするでしょう!」

「気持ちの良い目覚めの頃に、毎朝この足音がするんです!」

「最新のマンションなのに」

このように言われました。
「聴こえるかどうか」という、微かな足音でした。
しかし、この方の「日常生活」にとっては、「大問題」であり、大金を払って買ったマンションとして、「許せなかった」のだと思います。

この問題になったマンションはかなり、性能の高い建物でした。
遮音性能も「かなり高かった」ので、普通は、微かでも「足音は聞こえない」レベルです。

その面では、主張された方があながち間違っていないのです。
何故聞こえたのか?
原因は、2つあると考えます。

男性の場合、歩く際に「かかと」を床に叩きつけるように「ドスンドスン」と歩く人がいるのです。
恐らく上の住人の方は、そんな方なのでしょう。

もう一つは、お住まいの中が非常に静かであるということです。
このマンションはタワーマンションです。周辺からの音があまり入ってきません。
また、断熱性や気密性の優れた窓になっていて、遮音性も非常に高いものでした。
このお住まいは、一般的なマンションと比較すると、「格段に静か」なので、ほんの小さな音でも聞こえてしまうのです。

こういった「騒音問題」は残念ながら、後を絶たないので、マンション売買契約書には、「集合住宅という形式の建物であるので、上階や隣戸から音が聞こえる場合がある」と明記されていて、契約前に読み上げて確認もしているのです。
しかし、購入する時には、他に気になることが山ほどあって、スルーされてしまっているのです。

遮音の対策

1.外からの音

遮音性能の高い、窓に「交換」することが効果的です。

マンション・団地では、「窓」は「共用部分」なので、勝手に交換は出来ません。コンクリートの壁を削って窓を外す、やり方の場合には、承認されない場合もあります。

 

最近では、「カバー工法」という、現状の窓のコンクリートに取り付いている枠の部分だけを残して、それ以外をそっくりと交換するやり方があります。

これであれば、コンクリートの壁を削ることなく、交換出来ます。また、工事も1日で済みます。

管理組合に交換工事の申請する際に「カバー工法」であることを伝えれば、承認される可能性は高いでしょう。

 

もう一つの方法は、内側にもう一つ窓を取り付ける「二重窓」にすることです。

これであれば、工事の届出は必要ですが、承認は不要です。

この方法でも、効果は高いのでお勧めです。

2.隣戸からの音(隣戸への音)

本格的に対策するのであれば、隣戸側の壁に「遮音壁」を設置するのが一番効果的です。

「遮音壁」とは、壁の中に「吸音材」として「グラスウール」を詰めたものです。今ある壁の手前に、「遮音壁」を追加で設置する形になります。

グラスウールの「厚み」で遮音性能が、変わります。本格的に遮音する場合には、「200mm」位の厚みにします。

この方法は効果的ですが、部屋が大分狭くなってしまいます。

 

簡易的には、壁側に「遮音壁」の代わりに「家具」を置くことでも、ある程度は遮音効果が期待できます。

 

また、壁に「遮音シート」を貼る方法もあります。

これであれば、せいぜい数ミリから数センチで済みます。

「遮音シート」には2種類あります。

「壁の遮音材」として、販売されている「フェルト」などの吸音材で出来た「遮音シート」です。通販でも販売していて、簡単に手に入りますし、設置も容易です。

もう一つが「鉛」などの金属の入った重たい「遮音シート」です。商品名で言うと「サンダムシート」がそれにあたります。「重量」があるので「音を跳ね返す」効果があります。

これも通販などで手に入りますが、設置には、DIYの得意な方でないと難しいかもしれません。

 

この二つの方法は、遮音効果としては「多少良くなる」という程度だと思います。
この二つを組み合わせて設置すると、より遮音性能が上がるでしょう。

3.上階からの音(下階への音)

下階への音対策としては、床材をカーペットなどのクッション性のあるものにしたり、ラグを敷いて対策する方法があります。また、フローリングでも「ゴム」のついた遮音性能の高いものがあります。最近のマンション・団地では、最初からこのフローリングになっています。

 

そもそもの部分ですが、「かかと」を「ドスンドスン」とついて歩かないようにしましょう。

自分では気が付きにくいので、ご家族同士で確認し合いましょう。

 

対策が難しいのが、「上階からの音」です。

通常は、上階からの「音問題」では、管理会社が間に入って、「配慮をしてほしい」とお伝えして、解決をはかります。

しかし、相手任せなので、解決しない場合もあります。

「自衛手段」はないのでしょうか。
効果的な「自衛手段」が「確立されていない」というのが現状です。

 

壁と同様に天井内に「グラスウール」を敷き詰める事が効果的でしょう。
また、上階との境の床コンクリートにサンダムシートなどの「遮音シート」を貼ると更に効果が上がると思います。

つまり「遮音天井」です。
しかし、あまり「実例はない」と思います。

天井内には、電気の配線があったり、ダウンライトが埋め込まれていたりしているので、熱で「グラスウール」に引火する恐れが絶対にないとは、言い切れません。

そういったことから、マンション・団地では、天井内に「グラスウール」を敷き詰める事はしません。

(戸建て住宅の場合には天井裏に大きくスペースがあるので、断熱材としてグラスウールを敷き詰めることがあります)

 

調べてみたのですが「対策商品」として、一つだけ見つけました。

フクビ化学工業の天井遮音システム「サイレントドロップ」です。

これは、袋に詰めた「遮音材」を天井内に置いていくものです。

これであれば、引火の恐れもなく、一定の効果が期待できそうです。

これを設置するために天井を貼り替える必要があるかもしれませんが、すべての部屋ではなく、上階からの音が気になる部屋だけ対策すれば良いでしょう。

もう一つの対策

音を遮る「遮音」という方法以外に、最近注目されている、「音対策」があります。

主にオフィスに採用され始めている「サウンドマスキング」といわれる手法です。

これは、「他の音」で隣の会議室などの会話を「聞き取りにくくする」方法です。
「話し声」は聞こえるが、内容は分からなくなります。内容が分かると気になってしまい、集中出来なくなりますが、無意味な「雑音」であれば、よほどうるさくない限りは、気にならなくなります。

これが「サウンドマスキング効果」です。

主に「ホワイトノイズ」と呼ばれる、無意味で「気になりにくい」音を使います。
「ホワイトノイズ」は、異なる多くの周波数の音を組み合わせて生成されます。
多くの周波数を含んでいるので、他の音をマスキング(覆い隠す)する効果が高いのです。

人工的なホワイトノイズの代わりに、同様に多くの周波数を含んだ「自然音」を使う場合もあります。
「波の音」「風の音」「水のせせらぎ」「都会の雑踏の音」などです。

大きな騒音を防ぐことは、出来ませんが「不快」な音を「聞こえづらくする」効果があるので、お住まいでも利用出来ると思います。

先の「朝の上階からの足音」のような場合には、「効果」があったのだと思います。
その時に「この方法」を知っていれば、アドバイスできたのですが、10年以上も前で、残念ながら「サウンドマスキング」という方法は、ほとんど知られていませんでした。

自宅の場合でも、「ストレス」になる音を防ぐために、「ホワイトノイズ」や「波の音」「風の音」「水のせせらぎ」などの自然音を流す事は、効果があるでしょう。
音源は、探せば無料で手に入れることも出来ます。
また、有料の「ホワイトノイズ」や「自然音」などの商品もあります。
私も購入して使っています。

「在宅勤務」の時に使い始めました。

また、最近では、テレビを見ないことが多くなったので、夜の「寛ぎタイム」にも流したりしています。
効果のほどは、まだ良く分かりませんが集中したり、落ち着いたりするのに良いように思います。

さいごに

「騒音」は、決して「大きな音」だけではありません。「小さな音」でも「不快な音」が「騒音」なのです。
感じ方に個人差が大きいので、「不快な音」の基準を作るのは難しいでしょう。

「低周波音」については、議論がされているようです。
正確に「低周波音」の分類になるか、分かりませんが、業務用エアコンの大型室外機から「ブーン」という低い音が聞こえてくることがあります。
決して大きな音ではないのですが、「イライラ」するような音がします。

「騒音」については、「被害者」にも「加害者」にもなりうるのです。
出来るだけ「対策」をする事で、そういった事態を避けることも可能です。
リフォームなどの機会があれば、是非とも「音」の対策も考えてみてください。

「疑問点」や「分かりにくい部分」などありましたら、「コメントバック」または「お問合せ」にて、ご連絡下さい。
また、「遮音」や「快適な暮らし」などについて、あなたの「お考え」や「経験談」なども、是非お聞かせください。

当ブログでは以下を「重視」しています。

● 災害時の「準備」(防災)

● 安心で快適な「暮らし」

必ずしも、私が使っているものではありませんが、

以下の「準備」や「利用」を推奨致します。

ご高齢の親御さんのみまもり

日々暮らしに、何気なく重要な事です。

プロ」のハウスクリーニング

 

大規模修繕工事のように、何年かに一度は

「プロ」のクリーニングをしてもらいましょう。

おウチの中がスッキリします。


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「より良い暮らし」のためにおウチの中をスッキリと

普段、使わないものは、しまっておきましょう。


「防災備蓄」にもなる、ウォーターサーバー

 

「ボトル」セット型なので、いざという時の水の「備蓄」にもなります。

「ボトル」を下にセットするので、地震時も「倒れにくく」、日常の交換も「ラク」です。


災害時に長時間使える「大容量」蓄電池

 

いざという時に「必要」です。

スマホやTVで情報収集が必須です。

「電源確保」は「最重要」事項の一つ。

「準備」しておく事をお勧めします。


「プロ」の選んだ防災セット

 

いざという時に「必要」です。

「プロ」の選んだセットなので「安心」です。

おウチに1つは「備えておく」事をお勧めします。


 

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